平成15年度税制改正について
2006年03月29日
『平成15年度税制改正大綱について』
平成15年度税制改正の骨子である「平成15年度税制改正大綱」が、財務省より昨年12月19日に発表されました。平成15年度税制改正大綱を基に、FPに役立つ改正項目をピックアップします。
本年度の税制改正は、株式譲渡益や配当所得などの優遇税率の採用、相続時精算課税制度の導入などにより、個人金融資産の証券市場への誘導とシニア世代からミドル世代への贈与による財産移転、消費促進を狙うという点で、昨年までの税制改正と比較して、政策スタンスがより明確になりました。
しかしながら、本格的な少子高齢化社会となった日本の再生復活のために税制を活用するという点では力不足は否めません。
●個人所得課税
配偶者特別控除(上乗せ部分)廃止
所得控除の項目のうち、平成16年1月から、配偶者の合計所得金額が一定額以下の場合に最高38万円控除される配偶者特別控除が一部廃止されます。
将来的には主婦など女性の社会進出促進のため、更に制度の縮小が図られると思われます。
●土地税制
1.住宅借入金(取得)等特別控除(以下住宅ローン控除)
(1)現行の制度概要
平成13年7月1日から平成15年12月31日までに居住の用に供し、一定要件を満たした場合、住宅ローン残高の5,000万円以下の部分に対して1%が所得税額から控除されます。
控除期間は10年間で最高500万円の税額控除が受けられます。適用要件の1つに、住宅取得後6ヶ月以内に入居し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き居住していることが必要、とあります。
よって転勤等が発生し、家族全員で一時的に自宅を空家にするか貸家にしていた場合、減税の適用期間が残っていても、自宅に戻ってきて再び住宅ローン控除は適用されないことになっています。
(単身赴任で家族が新居に残る場合は適用されます。)
(2)改正案
転勤等の一定の事由から元の住居に戻った場合、減税の適用期間が残っていれば、残りの期間について再び減税を受けられるようになります。
平成15年4月1日以降の転居から新制度が適用されます。今年の2月や3月に転勤予定の方は検討が必要です。
2.登録免許税
不動産の価額を課税標準とする登記に係る登録免許税については、平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間の措置として、税率が引き下げられました。
一方、課税標準を固定資産課税台帳の登録価格の3分の1とする措置は、平成15年4月1日以後の登記から廃止されます。
「遺贈等無償による所有権移転」「所有権移転の仮登記」の土地の登記が必要な方は、3月末までに行うことがポイントです。
●金融証券税制
1.株式譲渡益課税
平成15年1月1日以降株式譲渡に係る課税は、申告分離課税制度に一本化されました。
これまでの株式譲渡益に対する1年超保有上場株式等に係る100万円の特別控除の特例・暫定税率の特例が廃止されます。
上場株式等の譲渡益に対する税率は20%(所得税15%、住民税5%)とされます。
但し特例として、平成15年1月1日から平成19年12月31日までは、税率が10%(所得税7%、住民税3%)となります。
2.配当課税制度
(1)現行の概要
個人の株式の配当所得は、総合課税が原則です。
ただし特例として、1銘柄の1回の配当が10万円以下(半年決算配当の場合は5万円以下)なら20%の源泉徴収、1銘柄の1回配当が10万円超50万円未満(半年決算配当の場合は5万円超25万円未満)なら35%の源泉徴収を選べば確定申告をする必要がありません。
(2)改正案
35%の源泉分離課税の特例は平成15年3月31日をもって廃止されます。
また、少額配当の申告不要の特例の上限額が、平成15年4月1日以降支払いを受ける配当等について撤廃されることから、上場株式等にかかる配当課税は源泉徴収のみで納税が完了する仕組み(申告不要)となります。
平成15年4月1日以降支払いを受ける配当については、配当額にかかわらず、税率が一律20%とされ、上場株式の配当については特例として、平成16年1月1日から平成20年3月31日までは10%の優遇税率が適用されます。
3.株式投信課税
平成16年1月1日以降、公募株式投資信託の収益分配金は、配当課税と同じ税制となり、課税税率は20%(所得税15%、住民税5%)となります。
特例として平成16年1月1日から平成20年3月31日までは、10%(所得税7%、住民税3%)となり、償還・解約損について株式譲渡益との損益通算が可能となります。
●中小企業税制
1.交際費課税
(1)現行制度の概要
資本金が5,000万円以下の法人について、定額控除400万円、定額控除額までの損金算入割合は80%となっています。
(2)改正案
400万円の定額控除を認める対象法人を、資本金1億円以下の中小法人に拡大されます。
また、定額控除額までの金額の損金算入割合が90%に引き上げられます。
2.少額減価償却資産の損金算入
中小企業者等の少額減価償却資産の取得価額の損金算入の特例制度が創設されます。
この「中小企業者等」は、資本金1億円以下の中小法人、従業員数1,000人以下の個人事業者等が該当します。
(1)改正案
中小企業等者が、平成15年4月1日から平成18年3月31日までの間に、取得価額30万円未満の減価償却資産を取得した場合には、取得価額の全額を損金算入(即時償却)することができるようになります。
2月や3月に10万円から30万円未満の備品等の購入を考えている方は、検討が必要です。
●相続税・贈与税
1.相続時精算課税制度(仮称)の創設
(1)制度の概要
相続税・贈与税の課税を一体化し、相続時に相続財産と贈与財産を合算して計算した相続税から、既に支払った贈与税を控除する制度が創設されます。
この合算する贈与財産の価額は贈与時の時価で行います。贈与の非課税枠は2,500万円で、非課税枠を超える部分は一律20%課税します。
贈与財産の種類、金額、贈与回数に制限はありません。
(2)適用要件
- 65歳以上の親から20歳以上の子である推定相続人(代襲相続人を含む)に対する贈与であること
- 受贈者は贈与者である父、母ごとに選択できる
- この制度を選択する旨を所轄税務署長に届出ること
- 平成15年1月1日以後の相続又は贈与から適用される上記制度選択の後は相続時まで継続適用され、
- 変更することができないため、通常の基礎控除110万円を利用する現行の贈与とどちらが有利か検討する必要があります。
(3)税額の計算方法
○贈与時
贈与税額=(贈与財産の価額-非課税限度額)×20%
- この制度を選択する場合、非課税限度額が2,500万円に拡大されます。
(限度額まで複数年にわたり利用可能) - この制度に適用される税率は、一律20%です。
- 平成15年1月1日から平成17年12月31日までの間に行われる住宅取得資金等の贈与に限り、親の年齢要件が撤廃されるとともに、非課税額が1,000万円上乗せされ、3,500万円に拡大されます。
○相続時
相続税額=(相続財産+贈与財産)×税率-贈与税額
この制度を選択してそれまでに贈与を受けた財産と相続財産とを合算して計算した相続税額から、既に支払った贈与税相当額を控除します。
(控除しきれない場合は、還付が受けられます)
2.住宅取得資金等に係る相続時精算制度(仮称)の創設
(1)制度の概要
親から子への生前贈与を促すため、平成15年1月1日以後の一定要件を満たす生前贈与については、非課税枠が拡大され、住宅取得資金等の贈与を受けた場合にも相続時精算課税制度を選択できるようになります。
(2)適用要件
- 贈与者は65歳未満の親も適用できる
- この制度を選択する旨を所轄税務署長に届出ること
(3)税額の計算方法
上記1.の(3)と同様です。対象となる親からの贈与については、従来の贈与税制度(年110万円の基礎控除)が使えないので、どちらが有利か検討する必要があります。五分五乗方式(従来方式)による住宅取得資金等の贈与については、平成17年12月31日迄の経過措置として存置される予定です。
また、平成15年1月1日以降に五分五乗方式による住宅取得資金等の贈与を受けた子は、その年以降5年間はその受贈者である親からの贈与について、この制度を選択することができません。
3.相続税贈与税の税率構造の改正
平成15年1月1日以後の相続、贈与に係る税率については、最高税率が引き下げられるとともに、税率区分の拡大が行われます。
4.相続税の2割加算対象者の追加
相続税額の2割加算制度の対象となる者に、被相続人の養子になった孫が追加されます。
(代襲相続の場合を除く)
5.生命保険契約に関する権利の評価
生命保険契約で、その契約に関する権利を取得した時において、保険事故が発生していないものに関する権利の評価方法について、一定の経過措置(施行日から3年間)が講じられた上、次の通り改正されます。
- (現 行) 払込保険料の合計額×70%-保険金額×2%
- (改正案) 権利を取得した時における解約返戻金相当額