健康保険制度の沿革
2006年3月28日
健康保険制度は、医療の中核として誰もがその恩恵を受けていますが、現行の健康保険制度が整備されるまでは、まともに医療を受けられない世の中だったのだと想像されます。
ここでは医療保険制度の歴史など沿革を眺めてみます。
健康保険法の歴史
健康保険法はドイツの労働者保険をモデルにして1922年に制定され、1927年に施行されました。
労働者の生活不安を解消し、技能のある労働力を確保するのが目的でした。
したがって当初はブルーカラーを対象とした職域保険としてスタートしましたが、1939年にホワイトカラーも対象とするようになりました。
また船員については海軍軍人の予備軍を養うという考えから総合保険(船員保険)が生まれ、官吏の処遇を向上させるために共済組合を設立しました。
1938年には国民健康保険法が制定されました。
農山漁村の住民、都市の商工業に携わる自営業者を医療費負担により家計の破綻から救済することを目的としましたが、実際には戦時下の労働力と兵力の確保をねらったものといわれています。
戦後、新憲法のもとで社会保障制度の整備が行われましたが1955年当時、医療保険制度の恩恵を受けられない人は、約3,000万人いました。
貧困の原因は医療費負担による家計の破綻であるという認識が高まり、1958年に国民健康保険法を改正し、1961年から国民がすべて健康保険に加入する体制が確立されました。
これは国の実施責任を明確にしたうえで、市町村は国に代わって国民健康保険の実施を義務づけ、住民は本人の意思にかかわらず、健康保険組合などの被保険者でなければ、市町村の国民健康保険の被保険者となることになりました。
健康保険の区分
一般の国民が加入する健康保険は大きく分けて三つに分類されます。
①会社など団体に所属している人を対象とした政府管掌健康保険(政管険保)、組合管掌健康保険(健康保険組合)、船員保険、公務員などが加入する共済保険。
②自営業や農業など、個人で生計をたてている人と団体で働いていて退職した人を対象とした国民健康保険。
③70歳以上の老人及び65歳以上で寝たきりの状態の人を対象とした老人保険。
政府管掌健康保険(政管険保)
①にある政管健保には主に中小企業に勤める人が加入します。
保険料は標準報酬と賞与のそれぞれ8.2%で、これを労使折半で支払います。
被保険者本人が医療を受ける際の個人負担は、平成15年4月より、かかった医療費の3割です。
また被保険者が使った医療費の13%が国庫より負担されます。さらに老人保険への拠出金の16.4%を国が負担します。
標準報酬とは、被保険者の収入のことで、保険の計算、保険給付の額を決定する基礎となるものです。
基本的には8月1日現在の被保険者の1カ月報酬を標準報酬としますが、これを算定するために同年の5、6、7月に支払われた報酬から、平均月収を算出します。
この標準報酬をもとに保険料が決まりその年の10月から新しい保険料が徴収され仕組みです。
報酬として計上されるのは、基本給(本給)・役付手当・家族手当・住宅手当・物価手当・家族手当・皆勤手当・残業手当・宿日直手当・通勤手当であり、年賞与が4回以上支給されると報酬にふくまれます。
残業手当などを考えてみても、被保険者の報酬を正確に算出するのが難しいため、5・6・7月の報酬をサンプルにして標準報酬を仮に算出します。
報酬月額を段階をおって40級に区分し、該当等級に相当する保険料を支払うこととなります。
組合管掌健康保険(健康保険組合)
健康保険組合は、主に大企業に勤める人が加入するものです。
企業が単体で、あるいは同業種の企業が集まり、健康保険組合を作り運営します。
保険料は平均で標準報酬と賞与の8.2%の範囲内で料率を決め、労使折半で支払います。
これは自主運営であるので医療費の増加は保険料の引き上げにつながり、労働組合は保険料を第二の給与と位置づけ、負担のありかたに注目しています。
医療費の不足分は多少国から補助されますが、老人保険への拠出金に対する国からの補助はありません。
国民健康保険
②については市町村が保険者になり、他の保険に入っていなければ強制的に加入させられます。
保険料は各地方自治体がそれぞれ規定を作り、世帯主の収入・資産・その世帯の被保険者の人数により算出され、徴収されます。
医療費の3割が自己負担で国からは医療費の50%が補助されます。
老人保険
③については、老人保険であり、現役を退き国民健康保険に加入したり子どもの扶養家族になっている老人が対象となります。
これは、83年に施行された老人保険法によって導入された制度であり、高齢者の医療費をだれが負担するか枠組みを決めたもので、被保険者が新たにこの保険に加入することではありません。
どの保険に加入していても、その保険の被保険者のなかに全人口のうちの70歳以上の人の割合が、一定程度存在すると仮定して、高齢者にかかる医療費を出し合う制度です。
老人保険に適用される費用の負担は国が12/60、都道府県3/60、市町村3/60、各制度の保険者が42/60ということになっています。
国や地方公共団体からの支出が全体の約3割で各保険からの支出が約7割となっており、国民が支払う保険料からの支出が多いものです。
