保険営業が「固定給」になることについての考察
2008年01月20日
明治安田生命が生保営業職を「固定給」に
明治安田生命保険が保険を販売する営業職員の給与制度を見直すことが発表されました。
現在の月7万円弱の固定的な給与を、月17万円に引き上げるということです。
ただし入社5年目までは月1件、入社6年目以上なら月2件の契約獲得などが条件だと書かれてました。
これは凄い英断だと思います。
国内生保の過酷なノルマ
かつて国内生保は過酷なノルマによって営業現場が運営されていました。
とてもここでは書けないようなことが横行していたわけです。
自分の前職入社が1990年でしたから、まさにバブルが終焉した年だったわけです。
しかしながら、こんなに景気低迷するとは考えてもおられず、生保営業現場は非常にパーティーやら会食やらが多くて、こんなことでいいのかよと、新人社員ながら強く思い、上司に反発していたりしました。
その上司も、もうその会社にはいません。
しかし悪いことは本当にできないと思いますね。
今のようにネットを介して情報提供することなど考えてもいなかった時代ですので、臭いものには圧力でフタを出来たわけですが、今はこうして記述できるように自由に情報発信できるわけです。
当時の上司にぜひ見てもらいたいと思いますね。
ところで話を戻しますと、ノルマが過酷なだけに、どうしても目の前の1件に集中してしまいます。
お客様にとって、良い悪いが判断基準では無くて、契約になりそうか否かが絶対的な判断基準となってしまいます。
また人材そのものに、怪獣のようなおばさんがちやほやされて、まともな人が冷めているところがありました。
営業の数字が絶対的に評価されていたからです。
これではお客さんはたまったものでは無いでしょう。
理論的には、今回の明治安田生命の固定給与移行は、お客様にとって良い方向に流れると判断できます。
本当にそのように影響するのかを、過去の実体験から考察してみましょう。
会社の姿勢と現場リーダーの力量に大きく左右される
上述の通り、理論的には良くなるはずですが、会社にとっては痛し痒しのところが多々あることが想像されます。
まず生保レディーの大半はあまり働いていないということです。
今が違っていたら大いに謝罪しますが、自分が営業所長をしていた頃は間違いなくそうでした。
働くための意識付けの時間が非常に長く、お客様のところに行く時間や、提案書に頭を悩ませて割いている時間が少なかったと言えます。
まぁ、それは会社がそうさせていたんですね。
目に見えない地道な努力よりも、はっきりと目に見える成果の数字しか評価しなかったわけですから。
その体質が変わっていないとすれば、非常に問題が多いわけです。
働いていない人たちの固定的な費用をアップさせるということは、経営的には大きなコストアップになり、収益が圧縮されてしまうことが予想されるからです。
生命保険の場合は、解約してすぐに他社に契約とはなりにくい商品だと思うんですね。
そうだとすると、契約している会社の収益が圧迫されることは、とりも直さず自分の契約にも配当ダウン等の悪影響が及ぶこともありえるということです。
そこで抜本的な対策として講じる必要があるのが、エース級の有能な人材を営業現場に投入していくことです。
まぁ今もそれは行っているでしょうけど、本当に人を育てられる営業リーダーの育成が間違いなく急務です。
自分の経験で至極恐縮ではありますが、リーダーの力量一つで仕事の量と質が大きく変わります。
自分は良く仕事をしていたつもりでした。
ところが、それよりも仕事をする営業所長がやはりいて、その営業所には量も質も勝てませんでした。
朝礼などを拝見して、リーダーこそが最大の経営環境であるということを悟ったのですが、そうした強いリーダーは今は育っているのでしょうか?
労働環境を変化させることは、本当に格闘の連続であり、タフな体力と精神力が要求されます。
つまらぬことで部下に絶対に負けてはいけないのです。
自分の知る限りでは、そのようにとことん格闘するリーダーは極めて稀でした。
たいがいが、上手にその場だけを取り繕い、転勤までを耐え忍ぶという感じですよ。
そういう蓄積で出来上がった職場環境を変化させ、働く集団にするのは並大抵の努力では無いと心の底から思います。
それが固定給を厚くすることに対する副作用を抑える作業だと考えます。
会社がそのような人事政策を、筋を通して腰を据えて行うことが肝要なのだと思います。
数字が落ちるのは、もの凄い恐怖でしょうけど、目前の数字ではなくて、着実な人材育成こそが社会に求められる要素です。
生保セールスを支援する決意
私は生保営業で鍛えられ、前職の体験のおかげで現在のコンサルができております。
そうした恩義を踏まえ、決意しました。
生保セールスをとことん支援してみよう!
それが我々独立系のアドバイザーの役目であり、以前お世話になった人たちへの大きな恩返しである・・
これから来るであろう時代は、本当にお客様のフォロー活動重視になるのだと思います。
そのためには、必要とされる知識は多くなることだろうと想像されます。
昨今脚光を浴びた、「不払い問題等から広まっている保険不信」を払拭するには、業界こぞって取組む必要があると予想できます。
仲間であるFPの中野君とかなり具体的な絵が描けました。
まもなくみなさんの前に、きっちりとした形として告知したいと考えております。
請う ご期待! やろう!
【参考記事】
NIKKEI NET(日経ネット) -
(http://www.nikkei.co.jp/news/keizai/20080115AT2C1200U14012008.html)
明治安田、生保営業「固定給」に・10月から、離職に歯止め
明治安田生命保険は保険を販売する営業職員の給与制度を見直す。
いまは契約の獲得額に応じて支払う歩合給中心だが、10月から、月1―2件の契約獲得などを条件に固定給を厚くする。
安定した収入を得られるようにすることで優秀な人材を確保、頻繁な離職に歯止めをかける。
契約獲得を優先する仕組みをやめれば、アフターサービスへの努力も給与に反映でき、保険金不払い防止につながる。
歩合給中心の保険営業のあり方が大きく変わる可能性が出てきた。
明治安田は見直し案を労働組合に提示した。
約3万1000人いる全営業職員が対象。
入社5年目までは月1件、入社6年目以上なら月2件の契約獲得などが条件。
これを満たせば現在の月7万円弱の固定的な給与を、月17万円に引き上げる。
2008年01月20日
カテゴリー:FPブログ
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